ジャガー・ルクルトは2026年09月09日、Duometre Grande Complication A Grande Sonnerie、リファレンスQ603H480を発表した。約1300部品と15の複雑機構を収め、四つのゴングでウェストミンスターの旋律を自動的に鳴らす一点物である。ピンクゴールドを主材としながら、暗い青灰色の文字盤と黒いアリゲーターストラップで機構を引き締める。本稿は着用や音色を体験した評価ではなく、公式発表と製品ページから構造を読む。
四つのゴングが時刻を自動で鳴らす
グランド・ソヌリは、操作した時だけ鳴るミニッツリピーターと異なり、正時と15分ごとに自動で時を告げる。本作のCalibre 182は、グランド・ソヌリ、プチ・ソヌリ、ミニッツリピーターという三つの報時方式を一つの腕時計へ収める。四つのゴングと四つのハンマーがE、C、D、Gの四音を組み合わせ、ウェストミンスター式の旋律を作る。正時には最長24音を鳴らす設計で、報時機構そのものが主役だ。
公式発表によると、グランド・ソヌリの連続作動換算は合計616音、約7時間30分で、プチ・ソヌリでは最大992音、約32時間に達する。ミニッツリピーターはリューズのプッシャーで操作する。従来型のスライドで専用ぜんまいを巻き上げる方式ではなく、ムーブメントから直接エネルギーを受け取る。音を聞かずに優劣を断定することはできないが、四音と自動報時を腕時計へ収める構成は技術的な核を明確にする。
三つの香箱で計時と報時を分ける
デュオメトルの考え方は、計時と複雑機構が同じ動力を奪い合う問題を分離することにある。Calibre 182では二つの主香箱がそれぞれ時刻・カレンダー系と報時系へ独立して動力を供給し、三つ目の香箱が自動報時の起動を担う。時刻・カレンダー系のパワーリザーブは48時間。手巻きムーブメントは4ヘルツで振動し、部品数は約1300、石数は116と公式製品ページに記載される。
六時位置の表示はG、P、S、Mの四つのモードを示す。Gはグランド・ソヌリ、Pはプチ・ソヌリ、Sは自動報時を止めてミニッツリピーターを使う状態、Mは時刻合わせである。新しい安全機構は、前の報時動作が終わる前にミニッツリピーターを再作動させることを防ぐ。複雑さを見せるだけでなく、誤操作から機構を守る手順まで設計した点が今回の更新である。
暗い青灰色が1300部品を整理する
外装は全面を黒くした時計ではない。45ミリ、厚さ16.16ミリのケースは、チタン製の内部ケースに18Kピンクゴールドのベゼル、ラグ、プッシャーを組み合わせる。文字盤側は従来より開口部を広げ、時分・カレンダー表示を30パーセント拡大した。暗い青灰色のラッカーとグラデーションを施したサンレイ・ギヨシェが、ピンクゴールドの部品と多数の可動部を背景から分ける。
黒の役割は、ケース全体を覆うことではなく、黒いアリゲーターストラップと暗色文字盤で機構の密度を受け止めることにある。裏側のサファイアクリスタルからはフライング・トゥールビヨンを見せ、251部品へ計87時間の手作業による面取りを行うほか、ペルラージュ、サンドブラスト、コート・ド・ジュネーブなど九種類の仕上げを使う。公式写真で色と構成は確認できるが、実物の反射や厚みの感じ方は別途確認が必要だ。
一点物だから価格比較では測れない
Q603H480は一点のみ製作される。組み立てと調整に専任時計師が約1年を要し、工程は1万6000超と公式資料が説明する。量産時計のように価格、在庫、納期を横並びで比較する対象ではない。むしろ、報時機構の音響を高めるためにゴング形状、固定、調律、チタン製内部ケースをどのように統合したかを見るべき作品である。新しいメタリックガラス製ゴングも振動伝達の改善に用いられる。
読者が確認したいのは、15複雑機構という数だけではない。四音の旋律を自動報時と任意報時でどう切り替えるか、二系統の主香箱が精度をどう守るか、暗色文字盤が情報の読み分けにどう寄与するかという三点だ。価格は今回確認した公式ページに表示されていない。購入可能性や商談条件を推測せず、現物展示や正規ブティックでの案内がある場合に、音、操作、ケース寸法を個別に確かめたい。
